土の中の子供

「芥川賞」受賞作品で、ニュースの紹介をきっかけに読みました。

本全体の雰囲気が、表紙の丁装の色のようです。単純で浅はかな表現をすれば、「暗い」です。

井戸の中に投げ入れられてしまったような気分になります。

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>>中村 文則「土の中の子供」

本当の闇は自分の心の中にある?

私が「井戸」のようだと感じたのは、おそらく「私の心の奥底」ではなかったかと思います。この作品が私に示す「暗さ」は、私自身の心の奥底にある「暗さ」そのもののような気がするんです。

私がこころの奥底の暗い部分に蓋をして生きる人間であるならば、「土の中の子供」の主人公はこの心の奥底の暗い部分にどっぷり浸かりながら生きている人間。つまり、どの人もなにかしら「心の奥底に暗さ」を秘めていることを前提に、その暗さと向き合うきっかけを与えてくれるのがこの本だと思います。

短編がさらに暗く、心の闇をえぐる

最終章で主人公がその暗さとの戦いに決着をつけて光を取り戻す流れが、暗い小説でありながら、さわやかな読後感を与えてくれます。不思議な余韻、、、感じてみたい方にオススメの1冊です。

個人的には、この本に納められている表題作とは別の短編と作者あとがきも印象深かったです。一見するとわかりにくい文章のようで、読んでみると気が付いたら井戸の底、という文章の技術もすごいのではないかと思います。